いまの時代がよくわかる!『そして、暮らしは共同体になる。』(佐々木俊尚)

2016年12月27日

作家・ジャーナリスト、佐々木俊尚さんの新刊『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマスタジオ)、とてもおもしろくて一気に読破した。


『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマスタジオ)
http://www.anonima-studio.com/books/lifestyle/kurashi-kyodotai/

表紙をめくるとピンクの薄紙(見返し)が。イラストも装丁も素敵で、ていねいに作られた本だなぁという印象を受ける。さすが、暮らしを大切にするアノニマスタジオ。

冒頭の、オーガニックや有機野菜についての記述から膝を打ちまくり。

農薬や化学肥料をつかわないオーガニックな無農薬有機野菜は、かつては消費者運動の象徴のような面がありました。

今でこそ、あちこちで有機野菜やオーガニックコスメ、無添加・無化調の食品などを気軽に購入できるようになったけれど、こんな風になったのはここ10年ちょっとのことではないだろうか。わたしの薄い記憶では、昔は有機野菜などを求める人は、子どもに市販のポテトチップスを食べさせなかったり、コーラを禁止するような、今でいう「食育」にうるさいお母さんが買うもの、というイメージだった。

20、30代の若い主婦も買うようになったのは、雑誌『ku:nel』や『天然生活』、『リンカラン』『エココロ』などが流行ったあたりからだと思う。「エコ」がおしゃれに取り上げられ、リネンの服が流行り、誌面でもよくオーガニックなものが取り上げられていた。

思い出した。「LOHAS(ロハス)」という流行語があった。「lifestyles of health and sustainability」の頭文字で、健康で持続可能な生活様式という意味。そのあたりから、「ていねいな暮らし」というワードがちょくちょく誌面をにぎわせていたように思う。

今はもう休刊してしまった雑誌もあるし、『ku:nel』のようにまったく違う雑誌にリニューアルしてしまったものもあるが、「ていねいな暮らし」に憧れる人が増えたのは、これらの雑誌の影響がとても大きかったという記憶だ。

あの頃のわたしは、これらの雑誌を毎月毎月買っていて、リネンクロスやかごバッグ、オーロラシューズなどなど、もう完全に「ナチュラルな人」だったのだ。あまりにもナチュラルにハマりすぎて飽き、今では普通の服を着ている笑。

ただ、食べ物や飲み物は、「なるべく体にやさしいもの」が好きで、有機食材を買ったりもする。ただし、「添加物は一切ダメ!」といったストイックさはまったくない。そのあたりを気にしすぎる神経質な人は、ちょっと苦手だ。

と思っていたら、佐々木さんの本がすっきり解決してくれた。

しかし一方で、「やりすぎ」になってしまった面もあります。それは、過激な「オーガニック原理主義」のような考え方が蔓延するようになってしまったことです。
(中略)
あまりにオーガニック原理主義に走ってしまうのは、バランスを逸してそれはそれでリスクが高くなってしまうし、変なニセ科学にはまってしまいかねません。EM菌やホメオパシー、水素水など怪しげな疑似科学はそこらじゅうに蔓延していて、オーガニック原理主義者たちを手招きしています。

これこれ! そうそう! ああスッキリした笑。
水素水や酵素を摂取するのは好きにすればいいと思うけれど、それをしつこく他人に勧めるのはやめていただきたい笑。

と、冒頭からもうおもしろすぎる。わたしにどハマり。

「オイシックス」や「成城石井」、「北欧、暮らしの道具店」など、好きな企業がちょこちょこ登場。佐々木さんが日々作っているおいしそうな料理のレシピもちょこちょこ登場。

料理ネタが好きなので、要所要所に食べものの話が出てくるのがとても楽しい。日本のナポリタンの話が出てくるのだけれど、

子どもの頃、スーパーの冷蔵の棚にかならず置いてあった「マ・マーのスパゲティ」。
(中略)
すでに茹でてある面を冷蔵したもので、粉状のケチャップソースが小袋入りで添付されていました。

なんと! 冷蔵コーナーに茹でたパスタが売っていたとは!
佐々木さんの本でいつもおもしろいなあと思うのが、ご自身の実体験の食話が出てくるところ。
わたしもよく家で母親にナポリタンを作ってもらったけれど、どんな麺を使っていたまでは記憶にないし、自分でパスタを作るようになってからは、マ・マーもデュラムセモリナの乾麺が当たり前。茹でパスタが売っていたという事実だけでも衝撃すぎる。

ハレ(祝祭)よりもケ(日常)という有名な言葉があります。
いまはハレよりもケの重要さが高まっている時代といえるでしょう。
これは食に限らず、あらゆる場面にその傾向が現れてきています。

これもほんとうに同感。
わたしは家で仕事していて、暮らしと仕事の線引きがないからこそ、心地よくストレスなく日々を過ごしたいという意識がとても強い。健康的でおいしいごはんを食べたいから、かつお節と昆布でだしもとるし、体にやさしい食材を選ぶ。きっとそのほうが、将来の医療費も減らせるに違いないと。

暮らしのことをベースに、Amazon、働き方、ミニマリスト、シェアハウス、ビッグデータ、ノームコア、オムニチャネルなどなど、今外せないキーワードがたくさん出てくる。

「ああ、それってそういう意味だったのね」とうなずくポイントがいくつもある。
「最近よく聞くけど、いまいち意味わからんかったわ〜」と笑。

いまの時代の空気感や消費、ビジネスなど、いろんなことをわかりやすく教えてもらって、「とってもスッキリ!」という読後感。

おもしろかった!

オススメです♪


【お知らせ】
・梅津有希子のTwitterはこちら
・梅津有希子のinstagramはこちら
・最新情報はこちら

関連する記事

コメントを書き込む

必須入力

必須(公開されません)

任意