トランペットでPL学園を応援する日が来るとは
2019年11月12日
元高校球児による「マスターズ甲子園」。
存在は何となく知ってはいたけれど、観たことはなかった。
「マスターズ甲子園」公式サイト
http://www.masterskoshien.com/
9月頭、大阪府代表でPL学園が出場するというニュースを見て、「吹奏楽部OBも集結する」「人文字も再現」と書かれてあったので、「絶対甲子園に観に行こう」と決めていた。野球部は2016年夏を最後に休部中で、2009年が最後の甲子園だったため、PLの応援は動画でしか見たことがない。「あの応援と人文字を、ぜひ生で観てみたい!」と、とても楽しみにしていた。
拙著『ブラバン甲子園大研究』でもPLの応援を取り上げているのだけれど、その時に取材したOBの方とはその後も交流があり、たまにメールをいただく。9月頭にもメールが来たので、「ああ、マスターズ甲子園出場のお知らせだろうな」と思っていたら、何と本文に「一緒に吹きませんか?」とあるではないか。
「えええ!!! 部外者が参加してもいいんですか?」と返信すると、「もちろんです。ぜひ!」とのこと。
わたしが中高時代吹いていた楽器はファゴットという木管楽器で、繊細で陽射しにも雨にも弱く、かつ音量も出ないため、通常野球応援では使わない。ファゴットの生徒たちは、大抵指揮をしているか、曲目ボードを上げる係をやっている。タンバリンなど小物打楽器を担当したりすることも。
高価な楽器のため自分では持っておらず、PL学園吹奏楽部のファゴットも借りることが出来たのだけれど。「野球応援では一度も使ったことがない」と顧問の長谷川先生。タンバリンをたたくことも考えたけれど、「せっかくなら野球応援の花形であるトランペットに挑戦してみようかな」と考えた。中1でファゴットを始めた時、2ヶ月で合奏に入って先生から「梅津、いつの間にそんなに吹けるようになったんだ!?」といわれたことをとても覚えていて、2ヶ月弱あったら何とかなるんじゃないか、と思ったのだ。
金管楽器はまったく吹いたことがない。Youtubeで楽器の吹き方講座みたいな動画も多くアップされているので、それを見て自己流でやってみることも考えたけれど、「やっぱりちゃんと習わないといろいろと難しいだろう」という考えに落ち着き、さっそくトランペット教室をリサーチ。わたしのゴールは「11月9日のマスターズ甲子園で、PL学園の応援曲を吹くこと」と決まっていたため、通うのは実質1ヶ月半でいい。
リサーチしてみると、全部で40回通わないといけなかったり、曜日と時間が決まっていたりと、フリーランスの自分の希望に微妙に合わない。楽器をレンタルするのに、なぜかイオンカードを作らなきゃいけなくて、そこからの引き落とししかダメ、とか。「現金で払う」って言ってもダメだった。
いくつか比較し、自分と先生の日程を調整できて、好きなだけ通える教室をみつけたので、そこに申し込んだ。
楽器はヤマハのレンタルを利用。無名のメーカーの1万円ちょっとで買えるトランペットもあるのだけれど、札幌時代、ヤマハ札幌店で働いていただけに、そういう楽器はあまり使いたくはない。やはり、愛着のあるヤマハが安心なので、半年間のレンタルを申し込んだ。
わが家に楽器が到着したのが9月20日。なんせ1ヶ月半しか時間がないため、最初のうちは週に3回レッスンを入れて、集中的に教えてもらった。後半は週1ペース。幸いにも家のすぐ近くに公園があるため、毎日そこで練習。
ファゴットを吹いていた時の感覚とまったく違って、トランペットはめちゃくちゃ唇が疲れる。バテる。息の量が全然違うのだ。
最初は10分くらいしか吹けず、1時間練習なんて、キツすぎてまったくできない。ヤマハ札幌店勤務時代にお世話になった楽器メーカーのトランペット吹き営業マンに相談すると、「1日3回、15分ずつ練習できない?」といわれ、「家で仕事しているし、公園がすぐ近くなのでできます!」と、朝昼夕方の3回に分けて練習するようにした。これが、とてもよかったように思う。
最初からいきなり音が出て、タンギングもできて、トランペット教室の先生に「最初からいきなりそこまでできる人は初めて」と驚かれたのだけれど、わたしとしては、理想の音には程遠く、高い音も全然出ない。先生いわく、高音は「毎日練習している初心者の中高生でも半年はかかる」とのこと。朝から晩まで吹いてる中高生とは、体力も肺活量も全然違うので、高音はそうそうにあきらめ、「オクターブ下げて吹く」「吹ける曲だけ吹く」ことに作戦変更。応援曲は全部で15曲ほどあったのだけれど、音域など、自分が吹けそうなのは7曲。それらを重点的に練習し、PLの代表曲である「ウィニング」と「ヴィクトリー」だけはきっちり吹きたかったので、譜面を見なくても吹けるように暗譜した。
高校野球に詳しくない自分でも知っているPLの校歌は、最初「無理だなぁ」と思ったけれど、「やっぱり吹いてみたい!」と、先生と一緒に何度も練習した。先生は、「俺がPLの校歌教えていいのかな」と言っていたけれど笑、「一緒に吹いてください!」とお願いして、2人でスタジオにこもって何度も練習した。全部吹くのはキツかったので、「ここは休む」「ここはオクターブ下げる」と、先生がいろいろと作戦を考えてくれた。
仕事をしながらそんな1ヶ月半を過ごし、11月9日、いざ本番…!!
現役生は、初めての甲子園。「すごーい!」「広ーい!!」「テンション上がるー!!!」と大喜びしてたのがとてもかわいかった。そうか、あれほどの強豪野球部だったけれど、今の子たちにとって、甲子園はとても遠い存在だったのだな…と、あらためて感じた。
マスターズ甲子園、ルールがおもしろくて、出場選手は全員試合に出ないといけないのだそう。いっぱいいると、監督の采配も大変笑。でも、いいシステムだなあと思った。
甲子園でトランペットを吹き、PL学園の応援をするというあまりにも貴重な経験。まさか甲子園で桑田真澄選手の応援をする日が来るなんて……。
ほんと、夢のようなひと時だったなぁ……。
もう、めちゃくちゃ楽しくて、アルプススタンドで取材している時とはまた違った、野球応援の魅力や音楽の力を改めて実感した。
マスターズ甲子園、PL学園校歌。とにかく「ウィニング」と「ヴィクトリー」だけは完璧にしなくてはと、校歌の暗譜までは間に合わず、楽譜の指番号見ながらめっちゃ必死に吹いてる。ラストの「永遠の学園 永遠の学園」だけはちゃんと吹けた…!! #PL学園 pic.twitter.com/zvYSbWZvJA
— 梅津有希子 (@y_umetsu) November 10, 2019
PL学園「ヴィクトリー」がんばったよ! ラストでオクターブ下げてるのが自分。トランペット初めて1ヶ月半。高音まだまだ無理!笑 #マスターズ甲子園 #ブラバン甲子園 #PL学園 pic.twitter.com/AALPdPaBIQ
— 梅津有希子 (@y_umetsu) November 9, 2019
音楽の力やチア、人文字応援が選手に届いたのか、PL学園が5-1で利根商に勝利。
おめでとうございます!
PL学園の皆さま、貴重な機会をほんとうにありがとうございました。
また来年もぜひがんばってください!
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