高齢者が犬を飼うということ
2015年7月28日
ただいま札幌。
母が入院することになり、つきそい及び老犬たちの面倒を見に、1週間こちらにいることにした。
こういうとき、フットワーク軽く動けるフリーランスでよかったなと、つくづく思う。
母は股関節の手術なので、特に心配することはない。入院手続きの際に「何か心配なことや不安なことはありますか?」と看護婦さんに聞かれ、普通は「手術が怖い」とか「個室に移りたい」などと答えるのかもしれないが、母の答えは「犬が心配」。
というくらい、今実家には、世話の必要な老犬が2頭いるのだ。
というか、いたのだ。
良太は、祖父母が飼っていた犬。母とわたしがペットショップで買った、最後の犬(今は保護犬を迎え入れている)。1999年、祖父母の愛犬チャコが亡くなり、ショックで落ち込んでいた2人に、母とわたしが2ケ月の子犬を買ってきてプレゼントした。先代と同犬種のシーズーを。
ケーキが入っているような小さな白い箱を開けた祖父は激怒。
「今から飼えるわけないべや! こっちだっていつ死ぬかわかんないんだから!」
喜んでくれると思ったわたしと母はびっくりした。だって、2人ともめちゃくちゃ元気じゃん。どこも悪くないし、いま麻雀やってるし。
当時の祖父母は72歳と70歳。今なら、その年齢で子犬を飼い始めるなんて超無謀。絶対に反対する。でも、当時のわたしは犬に関する知識はほとんどなく、目の前にいるいつも元気なじーちゃんとばーちゃんが、新しい犬を飼うことでさらにいきいきと楽しく暮らせるはず、としか思っていなかったのだ。
結局、ばーちゃんが「あぁぁ、めんこいめんこい」と小さなシーズーの魅力にイチコロになり、怒り狂うじーちゃんをたしなめて飼うことになった。良太の「良」は、じーちゃんが自分の名前の「良光」から一字とってつけた。というくらい、すぐに溺愛した。
良太をものすごくかわいがっていたばーちゃんは、8年後、78歳で亡くなった。その後わたしの父も亡くなり(享年63歳。早すぎた)。母は祖父と暮らすようになった。
長い介護期間を経て、昨年祖父が亡くなった。86歳だった。
結局、良太が1人残されてしまった。16年前、こうなるなんて、母もわたしもこれっぽっちも思っていなかった。
良太はもちろんうちで引き取り、母が面倒をみることになった。母も犬を3頭飼っていたのだが、ゴールデンのひらりが亡くなり、チワワのルルが亡くなり、残っているのは13歳のコーギー、きらりと、16歳の良太の2頭。
今年のお正月に帰って来たとき、良太は足元もおぼつかず、ヨロヨロしていたけれど食欲はあった。16歳でこれだけ食べればエライ! というくらい。
最後に会ったのは、2週間前の7月15日。仕事で札幌に出張していたので、実家にも寄ったのだけれど、良太はもう寝たきりだった。犬の半年は、人間で換算すると2年といわれている。
正直、母が入院している間、わたしが1人でちゃんと面倒を見られるだろうか……と自信がなかった。「容態が急変したらどうしよう。車運転できないから、抱っこしてタクシーで病院連れて行くしかないか」などと、脳内でいろんなシミュレーションをしていた。
と心配をしていたら、母が入院する前に、良太は静かに息を引き取った。
きっと、入院中の母が心配しないようにと、良太は配慮してくれたのだと思う。苦しまず、おだやかな最期だったと聞いて心底ホッとした。
うちが買って来た犬だったから、やっぱり最後までうちが面倒を見るようになっていたのだろうな。うちで最期を迎えてくれてよかったなぁ……と心から思うし、母は何も心配することなく、安心して手術に臨むことが出来る。
コーギーのきらりもちょいといろいろとあり、「DM」という難病を患っている。後ろ足が2本とも動かないので、前足だけで歩く。車いすもあるのだけれど、これを1人で装着するのはなかなか大変。ということを初めて知った。コーギーくらいの体重だと、「1人が犬をかかえて、もう1人が後ろ足に装着」という、2人体制じゃないとちょっと難しい。
毎朝、バギーに乗せて近所の公園まで連れて行く。大して歩けるわけでもないのだけれど、きっと気分転換になると思うから。
母は64歳。「もう自分ひとりで犬を飼うのは無理」という。
「いつどうなるかわからないし、今ならじーちゃんの気持ちがわかるわ」
「70すぎに子犬なんて無謀だった」
と。
16年前は無知だったなぁ……。母もわたしも……(゜-゜)。
でも、じーちゃんもばーちゃんも、良太からたくさんの幸せをもらったと思っている。
じーちゃんは、「良太のこと頼むな」といって亡くなったので、梅津家が責任を果たせてよかった。母も良太もほんとうによくがんばってくれた。
犬との向き合い方を、犬たちからじかに教わっているなと感じる今日この頃。
時には大変なこともあるけれど、犬やネコとの暮らしは本当に尊いものだと実感する日々。
それにしても、順番に旅立っていってしまうのはさみしいものだね。
母がいない間、きらりの面倒をしっかりみてから、甲子園へと向かうのだ……!笑
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2件のコメント
昨年5月7日に初めて飼った最愛のタイニープードルを亡くしました。心が折れてしまう悲しみを8か月間。もう絶対に生き物は飼えないと思うだけで涙がポロポロと流れるのを止められませんでした。9ヶ月間、ワンコと私の闘病生活でしたが、一度も大変だと思った事はありませんでした。胆嚢が破れ4時間に及ぶ手術を輸血をしながら耐えた愛犬。しかし、退院後左の脳に血腫が飛び梗塞を起こし右側の麻痺。全く動けなくなりましたが、努力をして足を引きずりながら、自分で歩くようになり、その努力の様子が今でも忘れられません。今でももう一度、犬を飼いたいと無謀な夢を追いかけ、似たようなワンちゃんをネットで探しては、泣きながら諦めている毎日です。愛犬を亡くして私は、70歳になりました。毎週4回はジムで7kmを1時間走っています。でも、高齢者には変わりません。無謀かと・・・
by 加藤典子 on 2021年2月1日 at 2:50 PM. #
加藤典子さん
お辛いですね…。
わたしもこれまでに何度か愛犬との別れを経験していますので、お気持ちがとてもよくわかります。
ワンちゃん、最後までよくがんばりましたね。
わたしの母も、典子さんと同い年の愛犬家ですが、数年前に愛犬が亡くなって以降、犬を飼うのを我慢しています。
典子さんと同じように、よくネットで似たような犬を探して見ていますが、見るだけで我慢しています。
やはり、年齢的にもう犬と暮らすことは難しいということがわかっているので、スポーツなどで発散しているようです。
50代の友人は、1人暮らしで子犬を飼い始めましたが、「自分にいつ何があっても愛犬が困らないように」と、
お財布に「私が倒れたり、万が一のことがあった時は、愛犬はこの人に預けてください」と、
面倒をみてくれる約束をしている人の連絡先を書いたカードを入れています。
いまは、世界最大級の動物チャンネル「アニマルプラネット」や、YouTubeなど、
テレビやネットでかわいいワンちゃんが見られますので、前を向いていきたいですね^^
by 梅津有希子 on 2021年2月2日 at 8:10 AM. #