選択肢があるということ。

2014年4月9日

今日から大学の動物病院で、愛犬凛太の放射線治療が始まる。

昨年11月末に、左目の開き方がいつもとちょっと違うことに気づき、かかりつけ医に電話で相談したところ、「気になるので、出来れば連れて来て欲しい」といわれ、すぐに連れて行った。目の表面に傷がついていたようで、目薬で数週間様子を見てみたところ、以前よりは目が開くようになった。でも、元通りではない。数週間経っても状況が変わらないので、眼科専門医で診てもらうことに。眼科専門医は都内に数軒。わが家は先代の犬もたまたまお世話になっていたため、スムーズに診てもらうことができた。

以下、その後の流れ。

眼科で詳しい検査をしたり、前回とは違う目薬で様子を見るも、変わらず。

目の病気ではないかもしれない。よく観察すると、左耳の動きと右耳の動き方が違うので、脳に問題がある可能性も否定できない。

外部機関でMRIを撮ってもらう。

脳に腫瘍のようなものが見えるものの、位置的に脳炎か腫瘍かの判定が難しい。

外部の画像診断の専門家に画像を見てもらう。

脳炎の可能性も捨てきれないが、腫瘍の可能性が高い。

選択肢は、脳炎ならかかりつけ医で投薬による治療が可能、腫瘍なら大学病院で手術か放射線治療。

大学病院を紹介してもらい、脳炎かどうか調べる最後の手段を試す(脊髄液検査)。

残念ながら陰性で、腫瘍が確定。出来ている位置が悪く、手術は不可能。

という、長い長い4カ月を経て、放射線治療を受ける決意をした。

脳の神経の近くに腫瘍が出来ていたため、左目や左耳に異常が出ていたのだった。

副作用のリスクを聞き、正直迷った。今、凛太はまったくいつも通りの生活で、元気だしよく食べるしよく走る。
治療は月水金の週3回と決まっていて、4週全12回のプログラム。副作用は、ひどい口内炎や中耳炎、食欲減退、ほかにもいろいろ。個体差が大きいらしく、平気な子も中にはいるのかもしれない。でも、人間も動物も、お医者さんは「起こりうる可能性」を説明しなければいけないから、辛い話もしなくてはいけない。

何十万も払って、こんな小さな犬にそんな思いをさせる意味があるのだろうか。

「放射線治療後、1年から2年延命出来ている子が多い」といわれて、「たった1年か2年?」と驚いた。でも、中には5年後もピンピンしている子もいると。

まだ6歳代と若いから、進行が速いのかもしれない。

副作用が起こる可能性を考えて、この1カ月、迷いに迷った。

大学病院の先生にぶっちゃけて相談して、現状を教えてもらった。ほぼ取材状態で突っ込んで聞くから、先生も答えにくそうだった。

国内で現在動物の放射線治療が出来るのは数カ所しかない。東京は3カ所。地元の北海道は、北大の動物病院でも出来ない。一番進んでいるのは三重の南動物病院。最も効果的な、週5の治療が受けられる。東京は、最高の治療で週3。

通っている大学の動物病院には、全国から患者さんが訪れる。

北海道から、フレンチブルが北斗星で通っているということを聞き、覚悟を決めた。ブルドッグやフレンチブルなどの短頭種は、飛行機に乗ることができない。JALもANAも。10年くらい前に、フレンチブルの子が熱射病で亡くなったのがきっかけ。

本州へ来るには、JRか車しか手段がない。

そんな子が、札幌駅から北斗星に乗って、10時間以上もかけてはるばる東京までやってきて、さらに上野から藤沢まで移動して治療を受けている。札幌の飼い主さんが上野から藤沢まで来るなんて、考えるだけで苦労が想像できる。電車移動も大変なはずだ。

週3回照射しなくちゃいけないから、大学病院の近くに、犬OKのアパートを1カ月借りたのだそう。

犬も飼い主さんも、相当なストレスだろう。毎回麻酔もかけるし…。

今回の選択が正しいのかどうかは、誰にもわからない。でも、選択肢を提示され、実行できる環境にある身としては、やってみないと後悔するのは目に見えている。

毎日悶々と悩みながら、ポジティブな要素書き出してみた。

●凛太が元気で体力があること。
●家から動物病院まで往復3時間で通院できること。
●仕事を調整して、なんとか月水金通うことができること。
●真冬でも真夏でも梅雨の時期でもなく、通いやすい時期でよかったこと。
●満員電車の時間帯にぶつからないこと。
●電車やバスで吠えない犬でよかったということ。
●PCを持って行って、待ち時間の間大学の図書室で仕事が出来ること。
●「この早い段階で発見出来た例はない」と先生に言われたこと。

週3で通えない人は、月曜から金曜まで入院させて、週末だけ自宅に連れて帰るのだそう。飼い主さんは迷うだろうし辛いだろうし、とても不安だと思う。でも、幸いなことにうちは通えるから、全然恵まれているじゃないか。

とはいえ、何度も「やろう」「やっぱやめよう」と頭の中で行ったり来たりしながら、普段通っているかかりつけ医の先生に「決めきれない」と相談しに行った。先生は16歳の愛犬の病気の治療をやめたって言っていた。「病院に連れてくるとお腹壊したり、すごく嫌がるので、迷ったけれどかわいそうなのでもうやめたんです」って。獣医師でもそれだけ悩むんだと知って、わが家も覚悟を決めた。

選択肢があるというのも難しいものだ。通うのが無理な場所に住んでたら早々にあきらめて、QOLを優先させる生活にシフトしてると思う。などと、いろんなことが頭を駆け巡りながら、治療を受けることを決めたのだ。

月水金通うって、そんなの無理な人のほうが多いに違いない。わたしはたまたまフリーランスなので、1カ月なら、週3で通えるようになんとか調整が出来る。夫婦そろって会社員だったら、こんなの無理だろう。

とはいえ、本当にこれが最善の選択肢なのかは答えが見えない。
今、凛太が元気でピンピンしているだけにものすごい迷ったけれど、1週間後や2週間後に容態が急変する可能性もあるわけで。

出来ることをやらないと絶対に後悔するので、12回の治療に挑戦してみる次第。一番がんばるのは、凛太。わたしは病院に連れて行き、祈るのみ。見守るのみ。1日おきの絶食、麻酔。途中でストレスから食欲なくなって、治療を継続できない子も少なくないという。

「体重が落ちたら、続けることができません」って言われてる。なので、今のうちにいっぱい食べさせておく。調子悪そうだったら、12回やらないてやめる。


大学構内の桜並木


5月上旬までの月水金、この図書室で原稿を書く


来年も一緒に桜が見られますように


来年も一緒にデコポン食べようね

最近、甘くないデコポンに当たると残すことを覚えた。ズルいヤツだ。

がんばろうね、凛太。

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