ありがとう、普門館

2013年11月15日

「吹奏楽の甲子園」こと普門館が改修断念のニュース、
吹奏楽愛好家の間で、まだまだ余波が広がっている模様。

だって、高校野球で例えるなら、
球場が甲子園からクリネックススタジアムに変わるようなもの。
(ごめん、名古屋国際会議場)

それくらいの衝撃なのだ。

昨日もブログを書いたけれど、
今日は普門館にまつわる思い出などを書いてみようと思う。

昨日の記事
耐震不足で“聖地”に終止符。吹奏楽の甲子園「普門館」


他にはない存在感

わたしが普門館の存在を知ったのは、中学生の頃。
札幌市立平岡中学校時代、
2歳年上の姉が吹奏楽部に所属していて、
3年の時に全日本吹奏楽コンクールに出場した。
当時の北海道大会は、北海道厚生年金会館(現ニトリ文化ホール)で行われており、
大半の学校は、通称「年金」で夏が終わる。
その先に普門館という道があることを、初めて知ったのだった。

新聞やテレビで大きく取り上げられる高校野球と違い、
当時はどこのメディアも吹奏楽コンクールのことを扱うことはなく、
主催の朝日新聞も、大会結果を誌面に載せる程度。
全国大会を終えて帰札した姉から、

「普門館すごかったよ! 大きくて、床が黒くてね……」

などと直接話を聞き、写真を見せてもらい、めちゃくちゃ興奮した。

「わたしも絶対普門館で吹く!」

と心に誓い、中1の秋に吹奏楽部に入部した。
そう、通常春に入部するところ、みんなより半年遅かったのだ。
今考えても珍しいケースだな。

そして迎えた中2の全道大会。
オッフェンバックの「パリの喜び」でダメ金で、
当時14年の人生で、間違いなく一番泣いた。
泣き疲れて、しばらく歩けなかったくらい。

この時すでに、3年の時点で学校が分かれることが決まっていた。
新興住宅街にあった平岡中は生徒の数が多すぎて教室が足りず、
近くに新しい中学校が出来ることが決まっていたのだ。
少子化の今では考えられないけれど。

わたしの住んでいた家は、新しく出来る真栄中学校の区域だった。

無情にも、どうがんばっても普門館へは行けないことが決まり、
高校は絶対に、普門館常連の札幌白石へ行くと決めたのだ。

中3で、平岡中は前年のリベンジで全国大会行きを勝ち取った。
かつての仲間たちが、あの黒光りのステージに立つ。

わたしは親に「どうしても普門館で平岡の演奏が聴きたい!」と頼み込み、
1人で飛行機に乗り、東京へと向かった。

●初めて見る巨大な普門館

黒光りのステージで吹く仲間の演奏を、緊張しながら客席で聴いた。
結果は見事、平岡中初のゴールド金賞。
みんなと一緒に客席で大泣きした。
そして、自分がこの場に立てなかったことが、
ものすごく悔しくもあった。
「うれしいのに悔しい」という、初めての感情。

結局、わたしが初めて普門館のステージに立てたのは、
それから2年後の、札幌白石高校2年のときだった。
憧れ続けてきた普門館で金賞を取れた時の喜びは、他に例えられるものがない。

そんな普門館で全国大会が開催されることは、残念ながらもう二度とない。


普門館の駐車場

全29団体のバスや、楽器運搬用のトラックが停まる駐車場。
これだけの駐車場があって、収容人数の多い音楽ホールは、
全国でも普門館くらいだろう。

全国大会当日、この駐車場には全国各地のナンバープレートが並ぶ。
札幌、青森、大阪、浜松、福岡etc……。
いかにも全国という光景。

みんな地元から、大きなトラックで大切な楽器を運んでやって来る。
本州の学校だと、生徒は団体バスで東京まで来るのだろうけど、
北海道代表は飛行機なので、都内移動用のバスは東京で借りる。
でも、楽器はトラックでやってくるので札幌ナンバー。
海を越えて、2日かけて東京まで届けてもらうのだ。

普門館で札幌ナンバーの運搬トラックを見ると、妙に感動したものだ。
「よく無事で来たねぇ……」などと思ったのだと思う。

卒業後も、母校の応援に行ったり、
近年は取材で、普門館には何度も行っている。

2007年には、普門館の床が記念品で配られたこともあった。

「吹奏楽の甲子園」出場者に人気、普門館の床、記念品に(朝日新聞)

>特に、舞台で顔が映えるようにと、床に黒色が採用されているステージは
>出場者のあこがれで、数年前からは「目指せ黒い床」が、
>各校吹奏楽部員らの合言葉だ。

あの黒い床は、そういう意味があったのか。
でも、「目指せ黒い床」は合言葉ではなかったと思う(笑)。
合言葉は、間違いなく「目指せ普門館!」である(笑)。

いろいろな思い出があるなぁ……。普門館。
もうこうなったら、いっそのこと全国大会は武道館でやってくれないだろうか。

普門館の代わりになれるのは、もう武道館くらいしかいない。漢字3文字だし。

そうえいば、先日普門館を見に行ったとき、
方南町駅の案内看板をよくよく見てみた。


Fumon-Kan-Hall

Fumon-Kan-Hall。

フモンカンホール。

……あれ、Fumon-Hallじゃないのか。
と思いながら普門館へと向かう。


FUMON HALL

やっぱりFUMON HALLだった。
東京メトロさま、誤植でございますよ(笑)。

あーあ。書いててようやく現実を受け止められてきた気がする。
でも、やっぱりさみしい。

ツイッターで「普門館」検索しては、同じ想いの見知らぬみなさまと、
この例えようもないさみしさを共有しているのであった。


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7件のコメント

私の高1娘も、やり残した気持ちを胸に全国大会当たり前の高校に入学しました。
娘の音ではコンクールメンバーにはもちろんなれませんでした。 
しかし、来年、再来年、普門館に
と思っていたのに。
残念です。
娘は来週のマーチング全国大会に出ます。

by かなぽん on 2013年11月15日 at 4:53 PM. 返信 #

かなぽんさん

やっぱり「目指せ、普門館!」ですよね…。
お嬢さんはまだ1年生ですから、次があるとはいえ、
普門館じゃないのはちょっと切ないですね。

マーチング全国大会、がんばってください!!

by 梅津有希子 on 2013年11月15日 at 5:32 PM. 返信 #

ネットを徘徊?中辿りつきました。

管理人様と同世代かと思いますが・・・

91~93まで高A部門、普門館で演奏しました。臙脂色のブレザーを着て。。。

札幌白石さんの赤ブレザー、覚えてますよ~!

普門館・・・天井の高さ、反響版の裏の仏像、ステージでは床の色と視界の広さ、客席後方までの距離感及び空間の巨大さ等あらゆるものに驚き1年目は驚き以外何も覚えてなかったのを思い出します。

管理人様同様に黒い床を目指した事はなかったですね(笑)

寂しさはありますが、あのステージに立てた事を母校以外で共有できる方に出会えるとは思いませんでした。

インターネットは便利ですね。

by SIN on 2015年8月16日 at 12:35 PM. 返信 #

SINさん

コメントありがとうございます! 同い年ですね。
エンジのブレザー、茨城の学校ですよね…?

赤ブレ、わたしが監修している吹奏楽&野球部漫画『青空エール』にも出てきます!

現在、全国の会場は普門館から名古屋国際会議場に変わりましたが、
漫画の中では変わらず普門館を目指しています。

反響版裏の仏像、この間取材したら、よく10円とか100円が置かれていたそうですよ。
最後は、神頼みというか仏像頼みをしていた生徒がたくさんいたそうです笑。

しかし巨大な宇宙空間のような会場でしたね。普門館。

あれぞ聖地、という名にぴったりです。

まさに、「吹奏楽の甲子園」ですね。

by 梅津有希子 on 2015年8月17日 at 1:46 AM. 返信 #

同い年ですか!そう、茨城代表です。

普門館、宇宙空間という形容が相応しいホールでしたね。

仏像への神頼み、ウチの学校では「金賞取れなくなるから禁止」って言われてました。。。信憑性は不明ですが(笑)

漫画の中での普門館、どう描かれるのか楽しみです。

聖地って言葉、甲子園と一緒に普門館のトイレのドアに落書きしてあったのを覚えてます。

今は消されちゃったかなぁ。。。

by SIN on 2015年9月9日 at 12:27 PM. 返信 #

梅津さん、お元気ですか??
1つ上のバリトンサックスだった佐藤です♪
覚えてるかな?忘れちゃったかな(笑)
ここ見つけて昔を思い出して涙ぐんでしまいました~(笑)

普門館に行けなかったとき本当に泣いたよね(笑)
梅津さんの泣き顔、今でも覚えてますよ(笑)私も相当泣いたケド♪

今は全国は普門館じゃないみたいでなんだか寂しいです。仕方がないのでしょうが。
でも私達は『普門館はバンドの甲子園』だよね♪

あれから25年以上たつけど、バンドの先輩方や仲間とはいまだに繋がってます♪
梅津さんにもそのうち会えるの楽しみにしてますネ(о´∀`о)

by 佐藤 on 2015年12月14日 at 9:19 PM. 返信 #

先輩、もちろん覚えてますよー!!!!!
うわー、なつかしいです!!

普門館、今でも普通にあの場所にあります。
でも、一般の人が中に入ることはもうできないので、なんだかさみしそうに見えます(T_T)。

たまに無性に見たくなって、ふらっと前まで行ってますよ。

いつか先輩にもお会いしたいです♪

by 梅津有希子 on 2015年12月15日 at 9:47 AM. 返信 #

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