第61回全日本吹奏楽コンクール取材後記
2013年10月29日
第61回全日本吹奏楽コンクール、
今年も、監修している『青空エール』の取材で行ってきた。
結果はこちら。
ここ数年、全国大会の高校の部、ずっと聴いているけれど、
いやー、今年もめちゃくちゃハイレベルだった。
興奮のあまり、2日経った今もコンクールモードから抜け切れない。
久々の燃え尽き症候群。出てもいないのに(笑)。
「吹奏楽の甲子園」こと普門館の耐震問題で、
昨年からコンクール会場となっている名古屋国際会議場。
うーん……。2年目の今回も、どうしてもピンとこない……。
やっぱり「目指せ、普門館!」であってほしいなぁ。
毎年思うことだけれど、どの学校の演奏も、ほんとうに素晴らしかった。
基本的に、どこの学校もうまいのだ。なぜなら全国大会だから。
下手な学校なんて1校もない。みんなうまい。すごいうまい。
そんな中、特に印象に残った学校のことなどを。
全国大会では、朝イチの演奏で金賞を取れることは、
ほとんどといっていいほどない。
会場が温まっていなかったり、
審査員の耳がまだ慣れていないということもあるのではないだろうか。
出番が1番の柏市立柏高校の生徒の気持ちを知ろうと、
誰に頼まれた訳でもないのに、勝手に3時起き(笑)。
わたしは札幌白石高校時代、全国大会の演奏順には恵まれていて
(つまりくじ運がいい)、朝早い出番は経験がない。
全29校中、2年のときは20番、3年のときは7番だった。
朝イチに当たった学校は、たとえ金賞常連の強豪校でも銀賞や銅賞ということが多い。
出番さえ遅ければ金賞が取れたかもしれないけれど、
こればかりはまさに「運も実力のうち」というヤツなのだ。
そんな中、柏の演奏は素晴らしかった。
1番って、舞台上でリハーサルがあったり、通常の団体の動きとは異なるため、
戸惑うことも多いのではないだろうか。推測でしかないけれど。
堂々たる、落ち着いた演奏。
余裕すら感じさせる。
聴きながら、「金賞だといいなぁ……」と思っていた。
なので、表彰式で「1番 柏市立柏高等学校 ゴールド金賞」と聞いた瞬間、
まさに「ゴ」と言った瞬間「ギャアァァァァ!!!!!」。
わたしも、隣で聴いてた別冊マーガレットの編集者も、
「おぉぉ!!!」「すごいすごい!!!」と叫んでいた。
柏の生徒たちから嗚咽にも似たような、声にならない声が聞こえてきて、
表彰式の頭から泣けてしまった……(T_T)。
地元北海道代表の、東海大四も素晴らしかった。
白石時代、ずっと切磋琢磨してきた良きライバル。
生徒同士の交流もけっこうあって、演奏会の後に一緒にごはん食べに行ったりしてた。
地元だけあって、いろんな人から第四の近況が入ってくる。
関東や大阪の強豪校は部員が200人くらいいたりするんだけれど、
北海道はそういうわけにはいかない。
土地が広い割に学校の数は少ないので、必然的に、部員も少なくなる。
朝日新聞CSR推進部「吹奏楽・合唱事務局」の公式アカウントのツイートによると、
東海第四は、
【全日本吹奏楽コン】東海大四高は、山やシラカバ林に囲まれた校舎で
雄大なサウンドとおおらかな表現を目指して練習してきたそうです。
初心者が多い1年生も出場するため、力を合わせて作り上げる「全員音楽」が特徴です。
とのことで、部員数は決して多くはない。
部員が200人いる学校は、
55人のコンクールメンバーをオーディションで決めることが多いけれど、
人数の少ない学校は、部員全員がメンバーだったりする。
それでも金賞をとれるって、本当にすごいこと。
井田先生のすごさを、改めて実感した。
北海道らしい雄大なサウンドだなぁ……と思いながら聴いていた。
伊奈学園の「レ・ミゼラブル」は、全国初演だと思うんだけど、
前半の部で一番会場が沸いた演奏。
演奏後の「ブラボー!!!」は、実はOBや父母の掛け声が多い(笑)。
いわゆる「ブラボー隊」というヤツだ。
でも、伊奈学園への「ブラボー!!!」は、身内だけじゃないのがすぐにわかった。
会場のあちこちから、歓声が上がっていた。
なんというか、引き込まれる演奏。
この曲、吹いている生徒も楽しいだろうなぁ。
何度も映画などの映像を見て、イメージを共有しながら練習したんだろうな。
後半は、片倉高校のマーチがとてもノリがよくて楽しかった。
馬場先生が跳びながら指揮をしていて、
指揮台から落っこちるんじゃないかと見ていてヒヤヒヤ……。
落ちなくてよかったです。
ラスト2の精華女子の「フェスティバル・ヴァリエーションズ」も凄すぎた。
鳥肌が立った。
これも、伊奈学園と同じくらいの大歓声。
まだネットで公開されていないけれど、おそらく驚愕の点数だと思う。
そして大トリの淀川工科高校。
毎度おなじみの「大阪俗謡による幻想曲」。
淀工は、この俗謡と、「ダフニスとクロエ」「スペイン狂詩曲」の3曲を
繰り返しコンクールで演奏する。
「いつからこのスタイルになったんだろう?」と気になって、
2年前に「大阪・淀工吹奏楽コンクール自由曲の謎」というブログを書いたことがある。
『なぜ彼らは金賞をとれるのか』(ヤマハミュージックメディア)によると、
丸谷明夫先生はこう語っている。
「オーケストラは同じ曲を何回もやる。これは落語と漫才の違いと似ている。
落語には型がある。同じ噺を百回、千回やる。僕は、芸というのはそういうことやと思います。
最近の新しい曲を手掛けるのも大事だけど、自分たちがいいと思った曲を
とことん掘り下げて何回も何回もやったらいいと思っている」
なるほど……。深い。
「なんでこの3曲ばっかり繰り返すやるんだろ」と思っていたけど、
こういう信念があったのか。
こんな学校は全国どこにもないので、
今後もずっと、このスタイルを貫いてほしいと心底思う。
今年の俗謡もすごかった。前回も鳥肌が立ったけど、
今回もやはり鳥肌が立った。
圧巻の「ブラボー!!!」であった。
全29校を聴き終えて、柏と習志野の生徒が金賞で号泣しているのが印象的だった。
両校とも、昨年は銀賞だったので、今年はリベンジの年だったのだ。
「全国で金賞をとって当たり前」と思われている彼らのプレッシャーは、
想像を絶するものがあるはずだ。当事者にしかわからない重圧。
自分もそういうプレッシャーの中で育ってきたので、
彼らの気持ちがよくわかる……。
「よかったねよかったね。本当におめでとう……!」
と、思わずひとりで涙してしまった。
今夏、甲子園の応援を観に行った大阪桐蔭と愛工大名電の演奏を
全国で聴けたのも感慨深かった。
みんなみんな、ほんとうにおつかれさまでした!
みんなの夏が終わったね。
はぁぁ……。書きながらようやく気持ちの整理がついてきた。
会場には、札幌白石の分身(笑)も連れて行った。
生徒たちがみんな持っている、ユニフォーム型のマスコット。
一心不乱のコースターは、本物の旗をスキャンしてOBが作ったもの。
またいつか、このステージに立てるといいね。
がんばれ後輩たち!
2件のコメント
いきなり失礼します!
この記事に興味を持ったので
コメントさせていただきます
現在、高校二年生で吹奏楽に所属しております
北海道の高校で、去年は全道銀賞という
結果を残しました。
東海第四さんみたいに一人一人が
ずば抜けて上手いバンドではありません。
でも、もっともっと上を行きたいです。
引き込ませる演奏って
どんな演奏なのでしょうか。
詳しく知りたいです。
ブラボー‼︎って言われる演奏がしたいです。
全国はどんな世界なんでしょうか。
本当にいきなりすいません。
なにか、一言でも返信していただけたら嬉しいです!
by くまくま on 2014年5月5日 at 5:58 PM. #
>くまくまさん
こんにちは。
ご質問の件にお答えしますね。
わたしやわたしの仲間たちが、全国大会に出場して思ったことです。
まず、「ブラボー! といわれる演奏」ですが、ブラボーといってほしいと思って演奏したことはありません。それはあくまでも結果論で、練習して練習して練習して、やりきったと思える演奏―ベストを尽くした結果―、「ブラボー!」や歓声、心からの拍手をいただけたり、「引き込まれるような演奏だった」という感想をいただけるのではないか、ということです。
「感動を与えるような演奏をしたい」というのも、ちょっと違うと思います。これも同様で、魂のこもった演奏が、結果として観客の心を揺さぶり、「感動した!」と言ってもらえるのではないかと思います。
>東海第四さんみたいに一人一人が
>ずば抜けて上手いバンドではありません。
>でも、もっともっと上を行きたいです。
全国大会に出場する学校には、とても上手な高校生がたくさんいます。高校生とは思えないくらいです。
でも、上手な生徒がたくさんいる学校が金賞を取れるかと言うと、そういう訳でもありません。個人コンクールではなく、みんなで奏でるハーモニーが重要だからではないでしょうか。ソロだけが超絶うまかったとしても、金賞が取れる訳ではありません。逆に、ソロがミスったとしても、銅賞になる訳ではありません。
とはいえ、個々の技術も高みを目指すことは大事だと思います。独学では限界があるので、時にはプロの指導を受けるなどして、腕を磨くことも大切ですね。
「先輩よりもうまくなりたい」「北海道の高校生の中で、一番うまいトランぺッターになりたい」など、目標を持つことも大切ですし、ライバルの存在も自分を高めてくれると思います。「負けず嫌い」というのは大切なことです。わたしが白石高校の現役の頃は、負けず嫌いな人ばかりでした。わたしも相当な負けず嫌いでした。今もですけど(笑)。「みんなで和気あいあいと波風立てず、横一列でやりましょう」という感じではなかったです。衝突しては話し合いの連続です。コンクールメンバーの席を巡っても、激しい争いです。たとえ仲よしでも、それとコンクールメンバーは別の話です。先輩も後輩も関係ありません。
メンバーから外された時には悔し泣きしながら練習し、「次の大会では絶対追い抜いてメンバーに復帰してみせる!」といったことの繰り返しです。
今北海道の高校は、部員全員がコンクールメンバーという学校も多いと思いますが、本州には200人近く部員のいる学校がたくさんあります。そんな中から選ばれた55人なので、それはそれはハイレベルです。
でも、層が厚い学校が金賞を取れるかといったら、それもまた違います。人数や技術だけではない、ということですよね。
>引き込ませる演奏って
>どんな演奏なのでしょうか。
観客の心に響く演奏、ということに尽きると思います。昨年の全国大会の伊奈学園「レ・ミゼラブル」は、生徒の皆さんもとても楽しんで演奏しているんだろうな、というのがとても伝わってきました。コンクールなので「大会」なんですけど、まるで演奏会のようでもありました。映画で有名になった曲なので、多くの観客が知っている曲だったということもあると思いますが、メリハリがあり、みんな歌うように吹いていたというか、聴いていて心が揺さぶられる演奏で、まるでミュージカルのようでした。
金賞常連の淀川工科高校は、もはや王者の風格です。でも、決して余裕で吹いている訳ではなく、頂点に君臨する学校のプライドをとても感じます。「金賞を取って当たり前」と思われている学校も、それはそれでものすごい重圧です。コンクールでは同じ曲を繰り返し演奏することで有名な学校ですが、それでも毎年心が揺さぶられます。吹く生徒は毎年違いますので。観客に訴える迫力が圧倒的で、本当にすごいと思います。気迫というヤツですね。
>全国はどんな世界なんでしょうか
ものすごい緊張感のある世界です。「これが高校生なの?」と思うような超絶技巧の生徒がたくさんいますし、どの学校も歩き方や整列の仕方からして違います。キビキビとして礼儀正しく、「さすが代表だな」という風格があります。
立ち居振る舞いも立派ですが、演奏もどこもとても上手です。当然ですが、地区大会、県大会、支部大会と勝ち進み(北海道は地区→全道ですが、本州はもう1つ関門があります)、狭き門をくぐり抜けてきた学校ですので、大変ハイレベルな演奏です。
昔は、失礼ながら「明らかに銅賞だろうな」、という学校があったものですが、この数年はそのような学校は皆無ですね。どの学校も本当にレベルが高く、素晴らしい演奏の連続です。
くまくまさんも、もしも機会があれば、一度全国大会を直接会場で聴くと、ものすごく刺激を受けると思います。わたしは中3の時に全国行きが叶わず、親に頼み込んで旅費を出してもらってひとり上京し、普門館の会場でハイレベルな演奏を聴いてただただ茫然としました。その時の経験が、「絶対白石高校へ行って全国で金を取る!」というモチベーションになりました。
とにかく、全道大会とはまったく雰囲気が違います。北海道でいう東海大四みたいな学校が、全部で29校も出ている訳です。
客席やロビーの様子、楽器の積み込み方など、DVDで演奏を見るだけではわからないことがたくさんあります。まさに、「さすが全国」です。
今くまくまさんが出来ることは、とにかく練習することに尽きると思います。誰よりも練習して練習して練習して、コンクールで「やりきった!」と思える、悔いのない演奏をすること。「あの時もっとこう吹けばよかった」という後悔の念は一生残ります。後悔しないためには、とにかく誰よりも練習すること。でも、くまくまさん1人が一生懸命練習しても、コンクールは団体競技ですので、部員全員が同じ方向を向いて、必死に練習することだと思います。
あと、このインタビューを読んで、録音することも大切だなと思いました。
http://www.korg.co.jp/SoundMakeup/SoundBytes/pocoapoco4/
このような機材を持っていなければ、今はスマホでも録音できますので(練習中に使えれば、ですが)、パート練習や分奏などを録音して、弱点を洗い出して徹底的に練習する、という方法も有効かと思います
先生からの指示を待つのではなく、生徒たちが自発的に行動することも大事だと思います。自分たちで考えて、いろいろな練習を試してみる。自由曲や課題曲の背景を調べる。
「どこどこの学校のように吹きたい」と真似をするのではなく、「自分たちならではの演奏」を追求することも大切だと思います。最近の全国大会は、ハイレベルながらも「○○サウンド」というのがわかりにくくなってきているように感じます。
くまくまさんの学校だからこそ出来る、唯一の演奏を期待しています。
すっかり長くなってしまいました…^_^;
がんばってくださいね! 応援しています♪
by 梅津有希子 on 2014年5月6日 at 3:26 PM. #