天理ファンファーレ、ワッショイ、セント・ポール。天理の野球応援の謎を徹底取材!

2015年3月31日

3月25日(水)選抜5日目1回戦、甲子園に念願の天理高校の応援を観に行ってきた。野球応援をウォッチし始めて約3年。野球も吹奏楽部も古豪である天理の応援は、いつか絶対に生で観たいと思っていたのだけれど、今回はスケジュールが合う!! ということで、24日の近江高校密着取材に続いて生観戦。繰り返すが、試合ではなく、アルプススタンドの応援を観に行ったのだ。

甲子園に到着し、天理の生音を聴いた途端鳥肌が……!!!!


スーザフォンが「T・E・N・R・I」!

アルプススタンドのチケットが早々に売り切れてしまい、まずは急いで外野へ。そして次は「少しでも近くで聴きたい…!」と、天理アルプスの真横の、3塁特別自由席自由席に移動し、ネットに張りついて聴いていた。


おぉぉぉぉ……!!

天理の応援は、Number webの記事にも書いた通り、基本的に「オブラディ・オブラダ」「ラブ・ミー・テンダー」「セント・ポール」の3曲のローテーション。これに、「ワッショイ」と「天理ファンファーレ」が加わるのが伝統的な応援スタイルで、多くの学校が吹く「ねらい撃ち」や「サウスポー」、「紅」「アフリカン・シンフォニー」などは一切やらない。このいさぎよさとオリジナリティがとても好きだ。

野球の強豪は、吹奏楽の名門も多い!?
完全ブラバン目線で見る選抜甲子園。(Number web)
http://number.bunshun.jp/articles/-/822954

天理×宮崎工 一塁アルプス風景(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=e0QcadEddyA

あまりにもガン見していたため、試合終了後、天理関係者の方から「梅津さんですか?」と声をかけられた。普段からわたしのツイッターやブログを読んでくださっていた方で、「アルプスしか観ていないので、そうかと思って……」と(笑)。

天理高校出身の指揮者・吉田秀高先生(52歳)をご紹介いただき、後日天理の応援曲についてお話をうかがった。

天理の応援は、昔からこのスタイルだったのか?

「うちは昭和30年代に甲子園初出場の頃から吹奏楽部も吹いており、当時は今のスタイルではなく、行進曲などいろんな曲を吹いていました。そのうち、“バッター1人に1曲”というのがプロ野球で流行り始めて、天理もそのようなスタイルに。以前は、リゲインのテーマソング『勇気のしるし』や『仮面の忍者赤影』なども吹いていました」

いつから3曲ローテーションに?

「1986年に天理が甲子園で初優勝した年、現役生はブラジルへ演奏旅行に行っていたため、アルプス応援はOBに担当してもらいました。前値の85年に阪神が優勝し、『選手1人に1曲』という応援スタイルがピークに。『Aura Lee(オーラ・リー)』(エルヴィス・プレスリー『ラブ・ミー・テンダー』の原曲)、『Our boys will shine tonight』(立教大学の応援歌としても知られ、『セント・ポール』と呼ばれることが多い)、『オブラディ・オブラダ』の3曲ローテになったのは、1990年以降です。打者ごとに1曲だと、長びくとずっと同じ曲を吹くことになるので飽きますけど(笑)、3曲だとテンポよく切り替えられるので、これはいい、と。夏の大会はコンクールとかぶるため、応援をOBに頼ることも多いのですが、複雑な曲や難しい曲をやらず、同じ曲ならいつでも練習なしで吹いてもらえる、ということもあります」

なぜこの3曲なのか?

「昭和40年代、当時の日本の吹奏楽界は楽譜が豊富にあるわけではなく、アメリカの資料に頼ることも多かった。学校用のマーチ集のような、マーチが15曲ほど入った楽譜を海外から輸入し、そこに載っていたのが『Aura Lee』と『Our Boys Will Shine tonight』。『オブラディ・オブラダ』は、ニューサウンズ・イン・ブラスの楽譜です」

ちなみに、アルプススタンドでの曲目パネルでは、「Aura Lee」が「JAZZ on 2」、「Our boys will shine tonight」が「JAZZ on 3」と表示されている。これも、輸入したマーチ集に書かれているタイトルだという。

「Our boys will shine tonight」は、立教大学の応援歌「St.Paul’s will shine tonight」(通称「セント・ポール」)として広く知られており、Youtubeの動画などでも、天理の応援はほぼ「セント・ポール」と書かれている。ちまたでも「なぜ天理が立教の応援歌をやっているの?」と思っている人も多いけれど、天理はアメリカのマーチ集に載っていた「Our boys will shine tonight」を採用したのであって、立教大学の応援歌は、実は全然関係なかったのだ。まったくの偶然。

「よく『セント・ポール』といわれるんですけど、立教大学が応援歌として使っているとは、全然知りませんでした(笑)」

「Our boys will shine tonight」を調べてみると、アメリカでは古くから歌われている作者不詳の曲で、応援歌としてとてもポピュラーな曲とのこと。歌詞は

Our boys will shine tonight, our boys will shine,
Our boys will shine tonight, our boys will shine,
Our boys will shine tonight, our boys will shine,
When the sun goes down and the moon comes up, our boys will shine.

で、柳沢慎吾が「ひとり甲子園」で歌う、「ててーててーてーよこーはまー♪」ではない。立教大学が「Our Boys」の部分を「St.Paul’s」にアレンジし、「St.Paul’s will shine tonight」というタイトルをつけて応援歌として取り入れたというのが真相。詳しくは立教大学のHPにも説明がある。

1927(昭和2)年、アメリカ合衆国カリフォルニア州のセミプロチーム「フレスノ野球団」が来日。バスケットボールもこなすこのチームは本学のバスケットボール部と親善試合を行った。その際のティーパーティーの席上で、フレスノ側がアメリカで古くから歌われていた「Our Boys Will Shine Tonight」を素とする「フレスノ・ウィル・シャイン」を「リッキョー・ウィル・シャイン」ともじって歌ってくれた。それをその後バスケットボール部員が歌い継ぎ、「リッキョー」が「セントポール」と変化し、大学の応援歌となっていった。

(立教大学HP 第二応援歌「St.Paul’s will shine tonight」より)
http://www.rikkyo.ac.jp/koyu/service/songs/

ちなみに、原曲はこんな曲。
「Our Boys Will Shine Tonight」

「オブラディ・オブラダ」は人気楽譜シリーズ「ニューサウンズ・イン・ブラス」の譜面をそのまま使用。1972発売の同シリーズ第一弾の曲であり、岩井直博氏による編曲。現地で聴いていて、ユーフォニウムの対旋律がとても美しくて感動したのだけれど、岩井先生の編曲と知り、高速で頷いたのであった。超絶納得。

天理のオリジナル曲2曲についてもうかがった。

今や全国各地の学校で吹かれている「天理ファンファーレ」について

「天理高校吹奏楽部初代指揮者の矢野清が作曲したもので、『序曲 マキシン・クッキー』(バウルス作)の、低音部の伴奏部分からヒントを得て作った曲です。昭和34年の選抜から使用しており、得点が入った時や、ヒットでランナーが出た時などに演奏します」

天理では単に「ファンファーレ」と呼んでいるが、一般的には「天理ファンファーレ」と呼ばれ、今では数えきれないほどの学校で吹かれている。このことを、吉田先生はどう思っているのだろうか?

「うちのオリジナル曲が全国に広まって、いろんな学校で吹かれるのはうれしいものですよ」

ちなみに、アルプスでは、プレイボール前にスローでこのファンファーレを吹くのがお約束だという。

もう1曲のオリジナル曲、チャンステーマの「ワッショイ」。

「この曲は、天理教音楽研究会管楽部の常任指揮者、石崎一夫が作ったもの。徐々にテンポアップしていくのが特徴で、『相手をたたみ掛けるように攻撃し、アルプスがひとつになるような曲を』と作曲を依頼し、昭和47年の夏の甲子園から演奏を始めました。ランナーが2塁と3塁にたまったら吹くというルールで、1塁3塁の時は吹きません。なので、ランナーがたまらずに立て続けにボンボン点が入っても吹きません(笑)。タイミングが合わずに吹かない時もあるのですが、『なぜ今日はワッショイをやらなかったんだ!』と学校に電話がかかってきたこともあります(笑)」

「ワッショイ」、あれはたしかにみんなやりたい。テレビの前で観ていてもやりたい(笑)。

ずっと疑問に思っていたことを全部お聞きし、ものすごくスッキリ。ごていねいに答えてくださった吉田先生、ほんとうにありがとうございました!

この夏もぜひ勝ち進んで、また甲子園であの素晴らしい演奏を聴かせてください……!!

※4月4日(土)、一部修正しました。


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