ゴーストライターという呼び名を何とかしたい

2014年3月8日

3月7日に佐村河内守氏が記者会見を行ったことで、再び(みたび?)「ゴーストライター」にスポットが当たっている訳だが、ジャーナリストの佐々木俊尚さんが、世の中の全フリーライターがスッキリするブログを書いてくれた。

「書籍のゴーストライターというエコシステム」
http://bit.ly/1facKNd

ここに書かれてあることが出版業界の常識で、昔から隠している訳でもなんでもない。ただ、「著者」がいる手前、「あの著者の本、わたしが書いたんだ」とは、皆気を使って言わないだけである。でも、当然ながら著者の了承のもとでライターが原稿を書き、著者自身も何度も原稿をチェックして「ここをこう直してほしい」「もっとこういうことを盛り込んでほしい」などとリクエストし、何度も修正を重ねて最終的に本が出来上がる。

なので、後ろめたいことでもなんでもないのだ。物書きには、こういう仕事もあるということで、こういう立場の人が「著者」からも求められているというだけのこと。ただ、出版業界の常識が、一般的には全然知られていないということ。
でも、ゴーストをやってるライターは、たとえ自分が書いた本でもなかなか宣伝しにくい。ツイッターやフェイスブックで告知したくても、堂々とは言いにくい。ので、大抵の場合、「お手伝いした本が発売になりました」「構成を担当した本が出ました」などと告知することが多い。

わたしも数冊、ゴースト経験がある。というか、きちんと奥付(本の一番後ろの、発行日やスタッフの名前が入っているページ)にクレジットが入っているので、あまりゴーストという意識はない。それぞれ、「テキスト/梅津有希子」「文/梅津有希子」「協力/梅津有希子」、企画&執筆を担当した本は、「企画/梅津有希子」とクレジットが入っている。なので、あまり考えずに「●●さんの『××』という本が発売になりました~」と、さらっと告知することが多いかな。いちいち自分がどんな役割だったかを説明することもないと思うし、より多くの人に読んでもらいたい、という想いのみ。

ただ、このクレジットの肩書の意味が理解できる人がどれだけいるのだろうかと、いつも思う。

出版業界の人は、「協力/梅津有希子」を見ると、「あ、文章は梅津って人が書いたんだな」と一発でわかる。でも、読者は「協力ってなんだろう。何かお手伝いでもしたんだろうか」くらいにしか思わないだろう。というか、その前に奥付なんてほとんど見ていないんじゃないのかな? まぁ、雑誌もそうだけど、スタッフクレジットって読者には関係のないことだろうなと思う。いい本、いいページが出来ればすべてよしなのだ。

誰もが知っている人気美容家のゴーストも担当したことがある。どのケースも、本人にはとても喜ばれた。「わたしの思っていることを、わかりやすく書いてくれてありがとうございます」と。それくらい、誰にでも伝わるわかりやすい文章を書くのは難しいということだと思う。

「著者がいるのに、文章を別の人が書いている」ということが世の中に浸透するにはまだまだ時間がかかるだろうから、ゴーストライターも、まずは著者に「本の宣伝をしたいので、文章は自分が担当したことを公にしてもよいか」、あるいは「自分も本作りに関わったことを言ってもいいか」と許可を取るといいんじゃないのかな。そして、どんな肩書であろうとクレジットは必ず入れてもらう。そこがあいまいだから、「告知したくても出来ない」というジレンマに陥る訳で。そこで著者から「そんなことされたら困る」といわれれば仕方ないし、「どうぞどうぞ、ぜひ宣伝してね」といわれれば、一緒に盛り上げていく。いろんな考え方の著者がいるだろうから、そこはケースバイケースな気がするなぁ……。

ちなみに今、初めて1冊文字だけの本を執筆中なのだけれど、いやー、大変。ものすごく大変。なかなか進まない……。今まで、レシピ本やペットの本など、写真多めのビジュアル本が多かったもので、数万字もの原稿を書いた経験がないのです。文章を書くことを生業としているライターの自分でもこれだけ苦労しているのだから、普段書き慣れていない人は、なかなか1冊書けるものではないと思う。中には自分でビジネス書を書いている著者の方もいるけれど、「本人が全部書いた」と聞くと、「え、すごい!!」と心から思う。ただでさえ忙しいのに、まるまる1冊書けるってほんとうにすごいこと。

それにしても、ゴーストゴーストって、書いてるだけで憂うつになる響きだわ……(-_-)。何かしっくりくる言い方はないもんかねぇ。以前ツイッターで紹介して反響のあった『職業、ブックライター。』(上阪徹/講談社)のように、やはり「ブックライター」という言い方が、今一番しっくりくるかもしれない。

この本、とてもわかりやすくてよかったので、ライターの仕事や「ゴーストライター」に興味のある方はぜひご一読を。


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