すごすぎて打ちのめされた、「花森安治の仕事」展。

2017年4月7日

世田谷美術館で開催中の「花森安治の仕事 〜デザインする手、編集長の眼〜」を見て、打ちのめされて帰ってきた。

『暮しの手帖』初代編集長。
そして、文筆家で、装丁家で、装画家。

なんでもこなすマルチプレイヤーということは、有名なので知っていたし、徹底的な商品テストや、雑誌なのに広告を入れないスタンスなど、『暮しの手帖』がどれだけの影響力を誇っていたか、ということは、出版関係者なら誰でも知っていること。

レイアウトも組み、絵も描き、ロゴも描き、企画も考え、文章も書き、デザインする。

今は、これらのほとんどが分業制。

わたしができるのは、企画を考え、レイアウトを組み、文章を書くこと。
絵は絶対に描けないし、デザインなんてもってのほか。

「それはデザイナーさんの仕事」、だと思っている。というか、現代では、普通はそういう感覚。

そんな時代だけに、実際に花森安治氏の仕事を目にすると、あまりの凄さに打ちのめされる。


「ぼくは編集者である。ぼくには一本のペンがある。」

昔がいかに、「ペンの力」が強かったかということ。を、グサッと突きつけられた。

今は、誰でもペンを持てる。発信できる。

「編集者」とは、かつてはごく一部の人しか就けなかった職業だったんだなぁ…と、この看板を見て痛感した。
そして、ペン一本で世の中を変えることができたのだ、と。

今なら、

「わたしにはブログがある」
「わたしにはSNSがある」

といったところだろうか。

実際、ブログやSNSで誰でも発信できるし、世の中を変えることだってできる。
「SNSで発信したことが、翌日のニュースになっている」なんていうことは、日常茶飯事だ。

でも、なんていうか、重さというか、覚悟というか、志が違う。

「発信力」という観点では、当時と今とではずいぶんと状況が変わっているけれど、花森安治氏のすごさは、その美的感覚。

イラスト、ロゴ、デザイン。

あまりにもマルチすぎる。
しかも今見てもまったく古びていないどころか、とても洗練されている。

「商品テスト」で使用した、昔の家電もたくさん展示されている。
昔の家電のおしゃれなことよ…。

「Toshiba」の電気釜や洗濯機、今あのデザインの商品があったなら、ぜひ欲しいと思うくらいカッコいい。

アイロンも、ストーブも、何もかも素敵。


唯一このパネルのみ撮影OK。あとは禁止。


図録と一筆箋を購入。この図録もとても読み応えあり。

このサイトでも、花森氏がどれだけすごいのかがわかるのだけれど、やっぱり生で見ると迫力が全然違うと思う。

暮しの手帖社・花森安治特設サイト「ぼくは、死ぬ瞬間まで<編集者>でありたい」
https://www.kurashi-no-techo.co.jp/hanamorisan/

世田谷美術館のある砧公園、桜が満開で超見頃です。


すっごい大きな桜の木(の集合体)


「源平しだれ桃「花桃」などと呼ばれる、3色の桃。

あまりにも美しすぎて、うっとり…。

砧公園「ファミリーパーク」内、「さくらのトイレ」の右100mくらいのところにあります。世田谷美術館から徒歩7分くらいかな。

あーーー……。
ほんと打ちのめされた。

会場内では、えんぴつでのメモがOKだったので、グサッときた一文をメモした。

花森安治氏とコンビを組んだ、大橋鎭子さんのエッセイ、『すてきなあなたに』の展示コーナーに書かれてあった文章。

すてきなあなたに

そのあなたに、いま心をこめて、
この一冊の美しい本を捧げます
ささくれだち、ひびわれた心のあいまに 音もなく
しずかにしみこみ、しっとりとひろがってゆく、このやさしさ
なにも言いはらず、なにも訴えず、それのゆえに、
いつか心をひたひたと揺り動かす、このなつかしさ
この一冊の本が私たちにとって誇りであるように
この一冊の本があなたにとって小さく、
ほのかな心の灯になることができますように

この文章を読んで、涙してしまった。

自分はこんなもの作りができているだろうか。
こんな本を作ることができているだろうか……。

昔と今とでは、出版業界やコンテンツ業界を取り巻く環境が激変しているとはいえ、「想いの強さ」「ブレない芯の強さ」を教えてもらった気がする。

ほんとうに、行ってよかった……。

世田谷美術館では、4/9(日)までの開催。

その後、以下を巡回するそうです。

2017年4月18日(火)~5月21日(日) 碧南市藤井達吉現代美術館[愛知県]
2017年6月16日(金)~7月30日(日) 高岡市美術館[富山県]
2017年9月2日(土)~10月15日(日) 岩手県立美術館

素晴らしい展示を見て、心に栄養をもらった感じ。

すごい見応えなので、ぜひ時間に余裕を持ってお出かけくださいね。


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